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震災後の災害援護資金が返せない背景にはいったい何があるのか

災害援護資金は、風水害や震災など災害救助法が適用される災害が起こったときに、被災者に低金利で貸し付けられる公的資金です。条件によりますが最大350万円まで借りることが可能です。
阪神淡路大震災や東日本大震災でもこの災害援護資金は多く利用されました。この制度のおかげで多くの人が生活を立て直すことができています。しかし、その裏側ではなかなか返済がすまず、今でも返済に苦しむ人が大勢いるのです。今回は多くの恩恵とさまざまな課題がある災害援護資金の現状についてお伝えします。
目次
1.災害援護資金はどのような時に支払われるのか
2.阪神淡路大震災の際の状況とはどのようなものか?
3.阪神淡路大震災の災害援護資金はどこまで返済がすんでいるのか?
4.返済現状を受け神戸市は返済免除者を拡大
5.東日本大震災での災害援護資金の変化と貸付状況
6.返済に苦しんでいる人は何を感じるのか
7.今からでもできる災害の備えとは

1.災害援護資金はどのような時に支払われるのか

災害援護資金は災害救助法が適用される災害時に、被災者の生活を立て直すために低金利で貸し出される公的資金です。天災とは住宅も仕事も一瞬で奪い去るもの。
この資金のおかげで多くの人の生活が再建されています。しかし、返済がなかなかできず、今でも返済に追われ苦しんでいる人がいるもの現状です。その災害援護資金についてもう少し詳しく解説します。

1.1災害援護資金と深い関係のある災害救助法とは?

災害救助法とは、災害が発生した際かかる費用を地方自治体だけでなく国も負担するように規定した法律のことです。対象となる地域の住宅に甚大な被害が出た場合に、この法律が適用されます。その基準は、主に住宅がどれだけの被害を受けたかを表す「住家滅失世帯数」が指標となります。その指標は以下のとおりで、どれかを満たしていれば適用となります。

市町村内人口住宅滅失世帯数
5,000人未満30世帯
5,000人以上1万5,000人未満40世帯
1万5,000人以上3万人未満50世帯
3万人以上5万人未満60世帯
5万人以上10万人未満80世帯
10万人以上30万人未満100世帯
30万人以上150世帯

 

都道府県内人口(1)住宅滅失世帯数(2)市町村内人口(3)住宅滅失世帯数(4)
100万人未満1,000世帯5,000人未満15世帯
100万人以上200万人未満1,500世帯5,000人以上1万5,000人未満20世帯
200万人以上300万人未満2,000世帯1万5,000人以上3万人未満25世帯
300万人以上2,500世帯3万人以上5万人未満30世帯
??5万人以上10万人未満40世帯
??10万人以上30万人未満50世帯
??30万人以上75世帯

(1)、(2)を満たした都道府県内の市町村内で(3)、(4)を満たした市町村が災害救助法の適用対象となります。そのほかへき地などは世帯数関係なく災害救助法適用対象となる場合があります。

1.2災害援護資金を受けられる対象者の基準とは

災害救助法が適用された自治体においても全住民が貸し付け対象となるわけではありません。災害援護資金が貸し付けられる主な条件とは以下のとおりです。

  • 世帯主が療養に約1カ月以上必要となる負傷を負っている
  • 家財の3分の1以上の損失
  • 住居が半壊
  • 住居が全壊・流出

また所得制限もあり、その制限は以下のとおりです。

世帯人数市町村税における前年度の総所得金額
1人220万円
2人430万円
3人620万円
4人730万円
5人以上1人増えるごとに730万円に30万円を加えた額

所得制限に関しては、自治体により基準が異なるため、災害援護資金の利用時には住まいのある自治体への確認が必須となります。また世帯の住居が滅失した場合は1,270万円以内の課税所得の世帯災は害援護支援金は支払い対象となります。

1.3上限額と貸付金の利率について

この制度のおいての貸し付けの上限金額は条件により異なりますが全体の最大額は350万円となります。また貸し付け後、3年は返済猶予期間となっています。返済猶予期間とは、災害援護資金の返済をしなくても良い期間のことです。しかし、災害援護資金を借りた場合、その猶予期間を含めた10年以内に返済を完了しなければなりません。

貸し付けを受けられる条件貸し付け最大額
世帯主の1ヵ月以上の負傷150万円
家財の1/3以上の流出150万円
住居の半壊170万円
住居の全壊250万円
住居の全体が滅失もしくは流出350万円

{
・災害救助法の適用有無
・最大額と条件がある
・援護支援金は返済義務
}

2.阪神大震災の際の状況とはどのようなものか?

1995年1月に起こった阪神・淡路大震災にも災害救助法は適用され、多くの災害援護資金が支払われました。その総額は神戸市内だけでも約777億円、3万1,672人が対象となっています。多くの人は地震のせいで家も会社も失い、生活に困窮した人たちでした。
{
・阪神淡路大震災にも適用
・利用者は家屋等失った人
・現在も残る課題
}

3.阪神淡路大震災の災害援護資金はどこまで返済がすんでいるのか?

2017年3月の時点で返済されていない金額は神戸市内だけでも約32億円にも上ります。阪神・淡路大震災から20年以上の歳月が流れたのにも関わらず、約40%の資金が返済されていないのが現状です。この現状の背景についてもう少し掘り下げてみましょう。

3.1環境の変化で、返済金のねん出が困難になる

災害援護資金には返済猶予期間が設けられています。この意向としては返済猶予期間に災害援護資金などを使い、生活を立て直したうえで返済をしていってほしいというもの。しかし、その思惑通りに生活が再建できなかった人も数多くいます。
たとえば、被災し会社が倒産してしまい、うまく再就職が見つからない、見つかったとしても給料が大幅に下がってしまったなどです。再就職が見つからない人は主に50代後半~60代の人たちでした。
また家族が病気になったため医療費がかさみ、返済が滞るケースもかなりあるようです。病気になりやすい・再就職先が見つからないというのは往々にして高齢者によく見受けられるパターンのため、返済に苦しむ人たちはおもに高齢の人々という現状もあります。
{
・高齢者ほど返済困難
・思わぬ事態で返済難しく
・生活再建は難しい
}

4.返済現状を受け神戸市は返済免除者を拡大

なかなか返済が完了しない阪神・淡路大震災の災害援護資金。この現状を受け神戸市は2006年、2011年、2014年、2017年の4回に渡り、支払い期限の延長をしましした。しかし、この措置を取っても返済残高がゼロになることはありません。
そこで、神戸市は新たに災害援護資金を返済しなくて良い返済免除者の拡大措置を取りました。もともと災害援護資金には、返済免除となる人の一定の条件が定められていたのですが、その対象者を拡大することにより、救済措置をとったのです。

4.1もともと返済免除が適用されていた人の条件とは?

災害援護資金をもともと返済しなくても良いという免除特例を受けていた条件は以下のとおりです。以下の条件を満たしている人は申請をすることで免除の特例を受けられていました。

  • 災害援護資金を借りた人が死亡し、相続人・連帯保証人・連帯保証人の相続人にも支払い能力がない場合
  • 災害援護資金を借りた人が精神・身体に重度の障害を受け、連帯保証人・連帯保証人の相続人にも支払いの雨量がない場合

4.2拡大された返済免除対象者とは?

もともとの返済免除対象者に加え、神戸市では新たに以下に該当する人を免除対象者として拡大しました。

  • 破産者
  • 生活保護受給者
  • 少額返済者

破産したり、生活が立ち行かなくなり生活保護を受けていたりする人も災害援護資金の免除対象者となりました。また月1,000円単位での少額返済を継続していた人も免除対象者に加わることとなりました。

4.3神戸市が返済免除対象者拡大後は保証人の支払い能力を無関係とする自治体も

阪神・淡路大震災では災害援護資金を借りる場合は必ず連帯保証人が必要でした。しかし、災害援護資金とはいたしかたなく借りるお金であり、個人的な借金とは全くの別物と考えるべきという声も多く上がっています。
そのような性質の貸し付けに果たして本当に連帯保証人がいるのか、連帯保証人の存在が返済を抱える被災者をより追い詰めるのではないかという意見も出ています。このため連帯保証人を必要とせず、借主の返済能力のみで貸し付けを判断しようとする働きかけが出てきています。
{
・回収のための措置
・返済期間延長は効果薄い
・返済免除対象者拡大
}

5.東日本大震災での災害援護資金の変化と貸付状況

2011年3月11日に起きた東日本大震災でも、災害援護資金は支払われました。しかし、この時は、阪神・淡路大震災の返済状況の反省を元に、当初から返済期間などに特別措置が制定されました。この特別措置の内容と、東日本大震災の返済状況について見ていきましょう。

5.1阪神・淡路大震災の反省もあり特別措置をはじめから制定

東日本大震災では阪神・淡路大震災の反省をもとに始めから返済期間や猶予期間の長期化や、連帯保証人無しでも借り入れ可能という措置を取りました。

返済期限と返済猶予期間を長く設定

東日本大震災でははじめから、災害援護資金の返済期間を返済猶予期間の6年を含めた13年と設定しました。さらに、生活保護者世帯や、住居が全壊した世帯などにたいしては返済猶予期間を8年設ける措置もとられています。

連帯保証人無しでも貸し付け可能

東日本大震災の災害援護資金では、連帯保証人がいなくても借り入れることができるようになりました。さらに、連帯保証人がいる場合は、利子を無利子、連帯保証人がいない場合は利子を1.5%に引き下げました。このことにより多くの人が連帯保証人を設けなければならないという精神負担から解放されました。また連帯保証人を制定した人としていない人との区別もなされ、被災者間の不満や心苦しさを軽減する一因となっています。

当初から返済免除対象者を拡大

通常は、災害援護資金を借り入れた人が死亡または重度の障害を負い返済不可能となり、なおかつ相続人や連帯保証人にも支払い能力がない場合が返済免除対象者となっていました。しかし、東日本大震災では、支払期日を迎え、10年経過した後も支払い能力がないと判断された借り入れ人は、返済免除となるとはじめから規定しています。

5.2東日本大震災の災害援護資金変死状況とは?

2017年の12月の内閣府の調査によると、東日本大震災における災害援護資金の貸し付けは、約520億円、約2万9,500件分におよびます。借り入れから6年間は支払い猶予期間とされているため、2017年末頃からはじめての支払日を迎える人が出てきています。
しかし、2018年11月現在でも、すでに支払いを困難と感じている人が多くいます。その中心となっている年齢層は、60代後半や70代以降の人々であり、再就職できない・家族が病気になったなどが原因として挙がってきています。
{
・阪神淡路大震災の反省
・当初から特例設ける
・それでも返済困難
}

6.返済に苦しんでいる人は何を感じるのか

悪質な無返済者に対しては、自治体が返済を求める訴訟を起こしたケースもあります。しかし、このような事例はごく一握りであり、ほとんどの人は返済できないという事実に苦しんでいます。

6.1被災直後は、その後の見通しが立つはずがない

被災直後は、災害が起こったショックやそれにともなう事後処理に追われ、災害援護資金をどのように返済していくかなど考えられません。このため、災害援護資金を借り入れた後に、再就職できない現実や 病気など思わぬ事態に見舞われ返済が困難になる人がほとんどです。
しかし、その反面震災後に災害援護資金を完済した人も多くいます。震災前の経済状況や災害時の被害状況は個々に違うため、返済能力や返済スピードは違って当然です。しかし、返済に追われる人々にとっては、「完済した人がいるのに自分は払えず申し訳ない」と感じる人が多いようです。

6.2完済した人がいるという事実に苦しむのは借り入れた人だけではない

災害援護資金の未返済に苦しむのは、借り入れ人だけではありません。完済した人がいるという事実と、返済に苦しむ人がいるという現実の間に立つ自治体も対応に追われています。災害援護資金は税収でまかなうため、かなり自治体の財政を圧迫します。
また自治体も、未返済の人々が経済的に返済困難と分かってはいますが、完済した人がおり、災害援護資金が税金である以上、未返済の人を放置するわけにはいかないのです。神戸市においては、督促状など今まで未返済の災害援護資金にかけたコストは43億円以上に上るようです。このように、莫大な回収費用もさらに自治体の財政を圧迫するという悪循環が生まれています。
{
・見通しが立たない震災後
・自治体も回収対応
・回収作業等財政圧迫
}

7.今からでもできる災害の備えとは

被災した場合、公的資金を受け取れるかどうかというのは、家屋や同じ地区の被害状況などによって左右されます。被害が甚大なのに所得制限に引っ掛かるというケースもあるでしょう。
このため、災害対策は完全に公的資金を頼りにすることはできません。個人でも火災保険に地震保険をオプションで付けたりなどの対応が必要となってくるでしょう。被災しないのが一番安心なのですが、災害はいつどこで起きるか分かりません。日頃からの備えを大切にしましょう。
{
・備えをしておこう
・保険の見直しおすすめ
・過去事例から学ぼう
}